白内障手術では、白内障によって濁った水晶体を取り除いて人工の透明な眼内レンズを挿入します。

手術前にどの眼内レンズを使用するかを決めておく必要があります。

この眼内レンズには単焦点眼内レンズに加えて「多焦点眼内レンズ」があり、多焦点眼内レンズを選択することによって裸眼でいろんな距離にピントを合わせることができます。

近年では、ただ単に見えるだけでなく、「裸眼で遠くも近くも見えたらな」、「眼鏡での生活から開放されたい」といったように見え方の質を高めたいと思っておられる患者さまも多く、多焦点眼内レンズを選択される方が増えてきています。

そして多焦点眼内レンズは年々進化をしており、今ではたくさんの種類の多焦点眼内レンズが存在します。 

  • 「多焦点眼内レンズとは?」
  • 「多焦点眼内レンズについて詳しく知りたい」
  • 「各レンズの特徴について」

ご自身の最適な眼内レンズ選択の一助になるよう、このような内容でまとめてきます。

多焦点眼内レンズとは

眼内レンズについて

白内障手術を行う際、眼内レンズを挿入しますが、このレンズは日々進化しています。それでもなお、眼内レンズ(人工レンズ)は、水晶体とは異なり、厚さを変えてピントを調節することができないため、近くか遠くどちらかにしか商店を合わせることができません。多焦点眼内レンズは、「遠くも近くもメガネなしで見たい」という方のために開発されました。どのレンズを使用するかは、患者様のライフスタイルやご要望を考慮したうえで、カウンセリングの上で決定します。

・・・ピントが合う距離が1つ

cat3no1
  • 見える範囲は…狭い手元か遠くのどちらかのみピントが合う
  • 見える質は…良いピントが合う1点はとてもよい
cat3no4

単焦点眼内レンズの場合(遠くにピントを合わせたとき)

・・・ピントが合う距離が複雑

cat3no2
  • 見える範囲は…広い手元か遠くまで見える
  • 見える質は…おおむね良いピントが少しあまい2021年4月発売のテクニスシナジーというレンジを主に用います。
cat3no3

多焦点眼内レンズの場合

多焦点眼内レンズについて視力に関するトラブルとして、ものを見るときにぼやけたり、暗所で見えにくかったり、光を見るときにじんわりしたり、まぶしく感じたりすることがあります。また、視力の安定には数ヶ月かかる場合があるため、しばらくの間様子を見る必要がある場合もあります。

眼内レンズの選び方を解説

多焦点眼内レンズのメリットとデメリット

眼内レンズを選択する「単焦点レンズ」、「多焦点レンズ」にはそれぞれメリット・デメリットが存在します。

眼内レンズを選択する上では、メリットとデメリットをしっかり理解しておくことがとても大切です。これらを知っておくことが最適なレンズ選択につながっていきます。

ここでは多焦点眼内レンズのメリット・デメリットを紹介します。

多焦点眼内レンズのメリット

裸眼でよく見えるようになる

多焦点眼内レンズを選択することで、「裸眼で」遠くも近くも見えるようになります。

これが最大のメリットで

「元々、若い時は遠くも近くも裸眼で見えていた人」

「眼鏡やコンタクトレンズでの生活から開放されたい人」

このような希望をお持ちの方は、多焦点眼内レンズを選択することで裸眼で快適に日常生活を送ることが期待できます。

眼鏡の使用頻度を減らせる

単焦点眼内レンズを選択した場合は手術後は眼鏡の併用が必要になりますが、多焦点眼内レンズではあらゆる距離にピントを合わせることができるため裸眼で生活を送ることが可能で、結果的に眼鏡を使うことが圧倒的に少なくなります。

「手術をしたら眼鏡がいらなくなった」

「裸眼なのにすごくよく見える」などと喜んで頂いています。

レンズの選択肢が豊富である

多焦点眼内レンズは年々進化しており、種類が豊富にあります。これも大きなメリットです。

各レンズそれぞれに特徴や強みが異なりますので、レンズ選択の際にはしっかりカウンセリングを行い、「ご自身の希望」「生活スタイル」に合わせて医師と相談をしながらレンズの種類を選択していきます。

種類が豊富なのでご自身の希望に沿ったレンズの選択が可能です。種類が豊富であることは最適なレンズ選択につながります。

多焦点眼内レンズのデメリット

多焦点眼内レンズには上記のメリットに加えて、デメリットもあります。このデメリットもしっかり理解したうえでレンズ選択をされることが大切です。

夜間のハロー・グレア現象

多焦点眼内レンズでは夜間に光を見た際に以下のような症状が起こる場合があります。

  • ぼやけてにじむように見える(ハロー現象)
  • ギラギラとまぶしく感じる(グレア現象)

これらの症状は「ハロー・グレア現象」と呼ばれます。

夜間の運転が多い人」「夜間に光の下で行われる土木工事に携わる人」などは注意が必要です。

多焦点眼内レンズによってはこのハロー・グレア現象が起こりにくいレンズをお選びいただくことも可能ですし、「ハロー・グレア現象」が出たとしても半年程度で改善することがほとんどですので、ご安心ください。

それでも夜間の運転や作業がある方は、このような点があることを知って頂いた上で医師と相談をしながらレンズ選択をしていきます。

コントラスト感度の低下

コントラストとは、物の輪郭、色の濃淡、明るさの明暗の違いなどで表現されることが多いですが、「くっきりと鮮明に見える」かに関わります。

多焦点眼内レンズではコントラスト感度が低下するとされており、通常の単焦点眼内レンズの方がコントラストの面では優位とされています。

ただし、このコントラスト面においても多焦点眼内レンズの種類が豊富なことによって、コントラストに優れた多焦点眼内レンズも存在します。

性格的に神経質な人や80歳を超える高齢者は注意が必要

多焦点眼内レンズでは、脳が見え方に慣れるまでに時間がかかったり(脳内適応)、ハロー・グレア現象やコントラスト感度が低下する場合があります。

そのため、性格的に神経質な人や80歳を超える高齢者には多焦点眼内レンズは向かないケースもあり、ご自身の性格面も踏まえてレンズ選択をしていくことも大切です。

デメリットを理解した上で最適なレンズ選択を

これらのデメリットを理解しておくことが最適なレンズ選択につながります。デメリットが気になり不安になってきたという方はご安心下さい。

多焦点眼内レンズの種類は豊富で、それぞれに特徴や強みが異なりますので、カウンセリングをしながら「自分が納得できるレンズ選択」をして頂くことが可能です。

多焦点眼内レンズの種類

現在、多焦点眼内レンズにはたくさんの種類があります。多焦点眼内レンズは2007年に厚生労働省に認可され、年々進化を続けています。

「2焦点眼内レンズ」に始まり、今では「3焦点眼内レンズ」、「焦点深度拡張型眼内レンズ」、「5焦点眼内レンズ」などが登場しています。

多焦点眼内レンズの種類が多くあることで、患者さまのおひとりごと「日常生活スタイルや希望」に合わせたレンズ選択が可能となりました。実際に多焦点眼内レンズを希望された場合には、より理想的なレンズ選択になるようしっかりとカウンセリングを行ったうえで医師と相談して、レンズを決めていきます。ここではレンズの種類による特徴をまとめています。

参考文献 多焦点眼内レンズの種類|JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)多焦点眼内レンズ情報 (jscrs-multifocal.org)

2焦点眼内レンズ

例:TECNIS® Multifocal(Johnson & Johnson)

2焦点眼内レンズは「遠方」「近方」の2つの距離に焦点が合うレンズです。近方は日常生活に合わせて加入度数を選択することができ、レンズによって30〜50cm程度の範囲内で手元の見え方を選択することができます。2焦点眼内レンズでは遠方・近方の2焦点となるため、中間距離での視力は低下することがデメリットです。

焦点深度拡張型(EDOF)眼内レンズ

例:Clareon® Vivity(Alcon)®、TECNIS Symfony®(Johnson & Johnson)、MiniWELL Ready®

焦点深度拡張型眼内レンズはより広い焦点深度を持った眼内レンズで、Extended Depth of Focusの頭文字を取って、「EDOF(イードフ)」と呼ばれています。また、プロクレッシブ型とも呼ばれます。

遠くから中間距離に至るまで、なだらかに焦点を持つ眼内レンズです。そのため、自然な見え方が期待できます。近方の加入度数がやや弱く、近くの見え方はやや劣ります。

手元での細かい作業をされる場合には近用眼鏡(老眼鏡)を併用する必要がありますが、自然な見え方を希望される方にはおすすめの眼内レンズです。

連続焦点型多焦点眼内レンズ(2焦点+EDOF)

例:TECNIS Synergy®(Johnson & Johnson)

連続焦点型(2焦点+EDOF)眼内レンズはテクニスシナジーが代表的です。

近方での見え方がよいとされる2焦点型と遠方から中間距離に至るまで自然な見え方が特徴である焦点深度拡張型の両者の良い点を併せ持つような構造です。

遠方から近方にかけて自然な見え方が期待でき、距離による視力の落ち込みがほとんどないため幅広い距離にピントを合わせることができます。

近方までしっかり見ることができ、33cm程度までピントが合うとされています。コントラスト感度も良好です。

3焦点眼内レンズ

例:Clareon® PanOptix®(Alcon)、FINE VISION®(BVI)

3焦点眼内レンズは「遠方」、「中間」、「近方」の3か所にピントを合わせることができます。2焦点眼内レンズでは遠くと近くの2点でしたが、それに加えて中間距離(60-70cm)にも焦点を持つことが大きな特徴です。

2焦点眼内レンズと比べて、中間距離の見え方が改善されています。3つの距離にピントを合わせるというレンズの構造的にハロー・グレア現象が起こりやすいというデメリットがありましたが、近年ではレンズの改良によってハロー・グレア現象が起こりにくい3焦点眼内レンズが登場しています。

5焦点眼内レンズ

例:Intensity®(Hanita Lenses)

イスラエルのHanita Lenses社によって開発されたIntensity®(インテンシティ)は世界初の5焦点眼内レンズです。

遠方、遠中(133㎝)、中間(80㎝)、中近(60㎝)、近方(40㎝)の5つの焦点を持ちます。このレンズは最新のレンズであるため日本ではまだ認可されておらず自由診療(手術代、レンズ代が自己負担)で費用が高額になることが欠点ですが、5焦点設計のためあらゆる距離にピントが合いやすいこと、ハロー・グレア現象が少ないレンズ設計で少なく夜でも安心して過ごせることが最大のメリットです。

最新のレンズを希望される方にはおすすめの眼内レンズです。

多焦点眼内レンズの構造

屈折型

例:LENTIS® Comfort(Oculentis)

多焦点眼内レンズの種類|JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)多焦点眼内レンズ情報 (jscrs-multifocal.org)

レンズの中心部は加入なしの遠方視用、その周りに近方加入した近方視用、さらにその周りに加入なしの遠方視用ゾーンをもった3ゾーンタイプである。

このように同心円状に振り分けられた構造を持つ屈折型の多焦点眼内レンズは

・十分な瞳孔径(黒目の大きさ)がないと近方が見えにくい

・夜間のハロー・グレア現象を自覚しやすい

などの問題点があり、現在ではこの屈折型ではなく「回折型の多焦点眼内レンズ」が主流となっています。1)

同心円状ではなく、上側が遠方、下側が近方と上下に分かれている屈折型レンズのタイプもあります。

1)ビッセン宮島弘子. これでわかる!高機能眼内レンズ 第1版. メジカルビュー社, 2020 , 11-15.

回折型

例:Clareon®PanOptix®(Alcon)、TECNIS Synergy®(Johnson & Johnson)

現在の主流で、屈折型のレンズと同じく同心円状ではありますが、より細かいレンズ構造で、階段の段差のような層構造になっているため、瞳孔径に関係なく近くが見えます。屈折型レンズとは異なり、瞳孔径に左右されないことが特徴です。コントラスト感度の面では屈折型より劣るとされています。

選定療養と自由診療について

多焦点眼内レンズを検討するうえで、費用面についても理解しておくことが最適なレンズ選択につながります。

単焦点眼内レンズは手術にかかる全ての費用が健康保険の適応となりますが、多焦点眼内レンズでは希望されるレンズの種類によって「選定療養」「自由診療」に分かれます。

選定療養とは?

選定療養とは、「保険適用外(自費)の治療」+「保険適用の治療」を併せて受けることができる制度です。

2020年4月より、厚生労働省に認可を受けた多焦点眼内レンズに限り、この選定療養の中で「多焦点眼内レンズ」を用いた白内障手術ができるようになりました。

手術前後の診察や検査・手術自体は通常の単焦点眼内レンズと変わらず保険適応で、多焦点眼内レンズ(厚生労働省に認可を受けたものに限ります)のレンズの費用のみ自己負担となります。これまで全額自己負担であった多焦点眼内レンズの手術の費用負担を軽減した形で手術を受けられるようになりました。

自由診療とは?

健康保険の適用外となるため、手術費用を含めて全額自己負担となるため手術費用が高額となります。自由診療のメリットは「Intensity(インテンシティ)」などのまだ厚生労働省の認可が降りていない最新のレンズを選択することができることです。

当院では、選定療養と自由診療のどちらも採用していますので患者さまの希望に沿ったレンズ選択をして頂くことが可能です。

当院で採用している多焦点眼内レンズについて

当院では、数多く存在する多焦点眼内レンズの中から院長自ら厳選した多焦点眼内レンズのみ採用しています。表にないレンズもご相談ください。

選定療養で選べる眼内レンズ

スクロールできます
選定療養オデッセイジェメトリックビビネックス
ジェメトリックプラス
テクニスシナジー
(2025年6月末終売)
パンオプティクスクラレオンビビティファインビジョンテクニスピュアシー
正式名称
(カタカナ・英語)
TECNIS Odyssey®
(テクニスオデッセイ)
Vivinex Gemetric®
(ビビネックス
ジェメトリック)
Vivinex Gemetric®Plus
(ビビネックス
ジェメトリックプラス)
TECNIS Synergy®
(テクニスシナジー)
Clareon® PanOptix®
(クラレオン
パンオプティクス)
Clareon® Vivity®
(クラレオン ビビティ)
FINE VISION®
(ファインビジョン)
TECNIS PureSee®
(テクニスピュアシー)
生産国アメリカ日本日本アメリカアメリカアメリカアメリカアメリカ
メーカーJohnson & JohnsonHOYAHOYAJohnson & JohnsonAlconAlconBVIJohnson & Johnson
選定療養金額
保険での
手術代の他に
かかる金額
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
片眼35万〜
(乱視用38万円)
乱視矯正
構造連続焦点型
(回析型2焦点・
焦点深度拡張型)
回折型3焦点型回折型3焦点型連続焦点型
(回析型2焦点・
焦点深度拡張型)
回析型3焦点波面制御型焦点深度拡張型回折型3焦点型非回折型EDOF
(OptiCurve™技術)
近方の見え方
※読書やスマホなど

(30〜40cmは老眼鏡が必要な場合あり)
中間の見え方
※パソコン作業など

(50cm程度まで裸眼で良好)
遠くの見え方
※車の運転など

(夜間の運転は注意)

(夜間の運転は注意)

(夜間も単焦点同等に良好)
ハロー・グレアかなり少ない最も少ないかなり少ないありやや少ないかなり少ないあり単焦点同等レベルで少ない
夜間の見え方◎(
単焦点と同等)
優位な作業・見え方スポーツ(ゴルフ含む)・
パソコン・読書・昼間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
パソコン・昼間運転・夜間運転・
パソコン・スマホ・
読書・夜間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
パソコン・読書・昼間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
パソコン・昼間運転・夜間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
昼間運転・夜間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
パソコン・昼間運転
スポーツ(ゴルフ含む)・
PC・昼夜運転・
夜間運転◎
コントラスト◎(単焦点同等)
その他特徴2024年最新最も
バランスに優れている
2024年最新 多焦点初の
国内会社開発レンズ
夜間のハロー・グレアが少ない
40cmの近方視力を強化
ペアリングで広範囲の視力カバー
近くの見え方に強い全体的なバランスが
とれている
ハロー・グレア現象が軽減近くの見え方に強いハロー・グレアがほぼない
近くの見え方は弱め
どんな人に
向いているか
2024年最新レンズ
ハロー・グレアがほぼなく
バランスのよい
レンズをお求めの方
2024年最新レンズ
仕事などでほぼ毎日
夜間に車を運転される方、
近くもそこそこ見えたい方
夜間運転と手元視力の
バランスを重視したい方
ペアリングを希望される方
遠くから手元まで
しっかり見たい方
夜間の運転が少ない方
近くもそこそこ見えたい方
夜間の運転が少しある方
仕事などで毎日の様に
夜間車を運転し、
手元はそこまで
見えなくても良い方
遠くから手元まで
しっかり見たい方
夜間の運転が少ない方
夜間運転が多く、
日常生活での
自然な見え方を優先する方。
老眼鏡使用に抵抗がない方。

テクニスオデッセイ

テクニスオデッセイ

2024年11月に発売された「テクニス オデッセイ(TECNIS Odyssey)」はアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソン社が製造した最新の多焦点眼内レンズです。このレンズは、アメリカでは7月に使用が開始され、日本では2024年8月から限られた施設でのみ先行使用が始まりました。デモとして先行使用していた施設からデータが出ており、レンズを入れた方の評判が非常によく、現在最も注目されているレンズです。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

焦点深度拡張型のため、遠方から近方まで自然な見え方になります。手元も37cmまで見えて、夜間のハロー・グレアが非常に少なくなっています。2024年11月から厚生労働省の認可が降りた最新のレンズになります。最もバランスに優れたレンズになります。

テクニスオデッセイをおすすめする人

近くも遠くもなるべく眼鏡なしで見たい方、夜間の運転もそこそこある方。

ビビネックスジェメトリック

ビビネックスジェメトリック

Vivinex Gemetric(ビビネックス ジェメトリック)🄬は、2024年にHOYA株式会社より発売された日本初の純国産・3焦点多焦点眼内レンズです。従来の多焦点眼内レンズは海外製が主流でしたが、日本の精密技術によって開発されたこのレンズは、高い製品精度と自然な見え方を両立させています。

  • 遠方・中間・近方の3箇所にピントが合う三焦点設計
    加入度数は中間+1.75D(約80cm)、近方+3.5D(約40cm)で、スマホ操作・PC作業・遠方視認まで幅広い距離をカバー。
  • 中心3.2mm径のみに回折ゾーンを設置
    夜間の瞳孔拡大時にも余計な光の干渉を抑え、ハロー・グレアの発生を大幅に軽減。
  • プリセット型挿入方式で感染リスク低減
    事前にレンズが挿入器に装填された状態で提供されるため、衛生的かつ短時間での挿入が可能。
  • 小切開(3.2mm)対応

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

  • 夜間の眩しさに非常に強い
    中心部のみの回折ゾーン設計により、夜間のハロー・グレアを最小限に抑えた設計です。
    夜間運転や外出の多い方にもおすすめできます。
  • 遠方視力を犠牲にしにくい
    多焦点レンズでは珍しく、遠くが見えにくくなりにくい設計。
    中間・近方に加え、遠方視力も確保したい方に向いています。
  • 純国産の安心感
    HOYA社は日本国内で高品質な単焦点レンズ(Vivinex MultiSert®)を提供してきた実績があり、
    同素材を使用したジェメトリックも信頼性が高いと評価されています。
  • 高い裸眼満足度
    手元のピントは約40cm。近距離を完全にカバーとは言えませんが、
    91%以上の方が眼鏡を使用せず手元を見られたという報告もあります。

デメリット

  • 近方視力(30〜35cm)を最重視する方にはやや弱い
    → さらに手元をしっかり見たい方には、ジェメトリックプラスの提案も行っています。
  • 見え方に慣れるまでに時間がかかる方も
    個人差がありますが、視覚適応に1週間〜数ヶ月かかる場合があります。しっかりとした術前説明が必要です。

ビビネックスジェメトリックをおすすめする人

  • 夜間の運転が多く、眩しさに敏感な方
  • 遠くから中間距離までよく見えるレンズを希望される方
  • 日本製レンズに信頼をお持ちの方
  • 眼鏡の使用を減らし、裸眼で日常生活を送りたい方

ビビネックスジェメトリックプラス

「ビビネックス ジェメトリックプラス(Vivinex Gemetric Plus)🄬」は、2025年4月にHOYA株式会社から発売された新しい3焦点多焦点眼内レンズです。 従来の「ビビネックス ジェメトリック」と同様に、日本企業が開発した安心の国内製造レンズでありながら、さらに手元(40cm付近)の見え方の質を向上させた設計が特徴です。

  • 40cmの手元視力がよりくっきり:従来型と比較して、より手元に焦点が合いやすい構造。
  • 中心3.2mmのみに回折ゾーンを設計:夜間のハロー・グレア(眩しさ)を抑えつつ、遠方視力を維持。
  • ペアリング手法に対応:左右で異なる焦点特性をもつレンズを使用することで、遠方から38cm付近までをカバーする“広範囲な裸眼視力”を実現。
  • 安心のHOYA社製:精密な光学技術と高い品質管理が支える、日本製の多焦点レンズ。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

ビビネックスジェメトリックをおすすめする人

  • より手元をしっかり見たい方(40cm前後)
  • 夜間の運転をされる方、眩しさが気になる方
  • PC・スマホ作業が多く、長時間の視作業を行う方
  • ペアリングによる幅広い見え方を求める方
  • 日本製レンズに信頼をお持ちの方
ジェメトリックとジェメトリックプラスの取り扱いについて

当院では、従来型「ジェメトリック」とあわせて、最新の「ビビネックス ジェメトリックプラス」も選択肢としてご案内しております。
また、左右で異なるレンズを使用する「ペアリング(Pairing)」による手術も多数の実績があり、見え方のバランスにこだわる方にも柔軟に対応可能です。
当院院長は、HOYA社の眼内レンズ製造工場を訪問し、日本企業の高精度な製造技術と誠実なものづくりに深い信頼を抱いています。

テクニスシナジー(2025年6月末終売)

テクニスシナジー

連続焦点型(回析型2焦点・焦点深度拡張型を組み合わせた型)レンズです。遠方から近方にかけて視力の落ち込みがほとんどなく、幅広い距離にピントを合わせることができます。当院で採用している選定療養の多焦点眼内レンズの中では、手元の見え方はこのテクニスシナジーが最もよいとされており、33cm程度までピントが合うとされています。コントラスト感度も良好です。眼鏡での生活からなるべく開放されたいという方にはおすすめのレンズです。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

焦点深度拡張型であるため、遠方から近方にかけて自然な見え方です。また手元の見え方がよいとされていますので、読書などの手元の作業で眼鏡を使うことなく裸眼で行えることが期待できます。

デメリット

ハロー・グレア現象は起こりやすいため、夜間の運転時などの見え方は他の多焦点眼内レンズと比べて劣るとされています。ただし、半年程度でハロー・グレア現象は改善することが多いとされています。

テクニスシナジーをおすすめする人

近くもなるべく眼鏡なしで見たい方、夜間の運転や夜間に光の下での作業が少ない方

クラレオンパンオプティクス

クラレオンパンオプティクス

回析型3焦点レンズです。遠方、中間、近方にピントを合わせることができます。従来の多焦点レンズに比べて、瞳孔径による影響を受けにくいとされていますので、明るさの変化によって見え方が変わる可能性が低く、見え方が安定していることが特徴です。どの距離も見やすく、眼鏡をかける頻度を減らすことが期待できます。ハロー・グレア現象はやや少ないとされていますが、人によってはハロー・グレア現象を訴える方もおられます。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

3焦点型であるため、どの距離にもピントが合わせやすい。瞳孔径の変化による影響を受けにくいので明るさに依存しない安定した見え方が期待できます。

デメリット

人によってはハロー・グレア現象が起こる場合があります。

クラレオンパンオプティクスをおすすめする人

明るさに関係なく安定した見え方を希望される

なるべく眼鏡で見たい方

クラレオンビビティ

クラレオンビビティ

焦点深度拡張型レンズです。遠方から中間距離にかけての見え方に優れ、遠くから中間距離は眼鏡なしで快適に見ることができます。ハロー・グレア現象はかなり少ないとされており、夜間の運動がある方におすすめのレンズです。

ただし、手元の見え方は他の多焦点眼内レンズより劣るとされており、手元は眼鏡が必要となる場合があります。まぶしさを感じるハローグレアが大幅に軽減され、夜間に車の運転をする方にも適したレンズです。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

多焦点眼内レンズを検討していて夜間の運転が多い方はハロー・グレア現象が気になる方もおられると思いますが、このレンズはハロー・グレア現象がかなり軽減されています。

デメリット

30~40cm程度の手元が見えにくいとされており、眼鏡が必要となる場合が多いです。

クラレオンビビティをおすすめする人

夜間の運転が多い方

より自然に見たい方

手元は眼鏡をかけてもよいと思える方

ファインビジョンHP

ファインビジョンHP

遠方から近方にかけて比較的良好な視力を期待できます。近方は35cm程度までピントが合う設計になっており、眼鏡での生活から開放されたい方にはおすすめのレンズです。

ハロー・グレア現象はやや感じやすく、夜間の運転が多い方には向きません。

ただし、手元の見え方は他の多焦点眼内レンズより劣るとされており、手元は眼鏡が必要となる場合があります。まぶしさを感じるハローグレアが大幅に軽減され、夜間に車の運転をする方にも適したレンズです。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

テクニスピュアシー

テクニスピュアシー

テクニスピュアシーは、ジョンソン&ジョンソン社が2025年に日本で発売した最新の 焦点深度拡張型(EDOF)多焦点眼内レンズ です。従来の「回折型」や「ゾーン型」の多焦点レンズとは異なり、非回折・連続屈折デザイン(OptiCurve™テクノロジー) を採用しており、単焦点レンズに近い自然でクリアな見え方を実現します。

特徴としては、

  • 遠方〜中間の視力が非常に良好
  • 夜間のハロー・グレアが単焦点と同等レベルに少ない
  • コントラスト感度が高く、鮮明な視界

が挙げられます。

一方で、近方(30〜40cm程度)の細かい文字を見る際は老眼鏡が必要になる場合があるため、完全に眼鏡不要というわけではありせん。

選定療養金額保険での手術代の他にかかる金額

片眼35万(税込み)
※乱視用38万(税込み)

メリット

  • 単焦点と同等の夜間視力
    ハロー・グレア・スターバーストが抑えられ、夜間運転も安心
  • コントラストが高い
    細かい色や輪郭がくっきり見えやすい
  • 遠方〜中間距離に強い
    運転、スポーツ、パソコン作業などの日常生活に適している
  • 残余屈折に強い
    手術後に多少のピントずれがあっても見え方に影響しにくい

デメリット

  • 近方視力はやや弱い
    読書やスマホなど30cm前後の作業には眼鏡が必要になることがある
  • 完全な眼鏡不要にはならない
    特に細かい手元作業を頻繁にする方は補助的な眼鏡が必要

テクニスピュアシーをおすすめする人

  • 夜間運転をよくする方→ ハローやグレアが少なく、単焦点と同等の夜間視力が得られる
  • スポーツやアクティブな生活を送る方→ 遠方〜中間が得意で、日常生活の大半を裸眼で快適に過ごせる
  • 自然でクリアな見え方を重視する方→ コントラスト感度が高く、見え方の質を重視したい人に最適
  • 老眼鏡の併用に抵抗がない方→ 手元の細かい作業では眼鏡を使っても構わない方

シンフォニー

焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズであるため、遠方から中間にかけて自然な見え方が期待できます。

現在では同じく焦点深度拡張型でシンフォニーの欠点が改良されたクラレオンビビティなどのよりよいレンズが登場していますので当院ではそちらをおすすめしています。

自費診療で選べる眼内レンズ

スクロールできます
眼内レンズの
種類
インテンシティミニウェルエボルブギャラクシー
正式名称
(カタカナ・英語)
Intensity®
(インテンシティ)
MiniWELL Ready®
(ミニウェル レディ)
Evolve®
(エボルブ)
Galaxy®
(ギャラクシー)
生産国イスラエルイタリアイタリアイギリス
メーカーHanita LensesSIFI MedTechSolekoRayner
自由診療金額66万円(税込)〜お問い合わせお問い合わせ66万円(税込)〜
乱視矯正
構造回折型
5焦点型
屈折型
焦点深度拡張型
屈折型
焦点深度拡張型
スパイラル型
近方の見え方
※読書やスマホなど
中間の見え方
※パソコン作業など
遠くの見え方
※車の運転など
ハロー・グレア少ないかなり少ない少ないかなり少ない
夜間の見え方
優位な作業・見え方スポーツ・
パソコン作業・読書
スポーツ・
パソコン作業・読書
スポーツ・
パソコン作業・読書
スポーツ・
パソコン作業・読書
コントラスト
その他特徴世界初の5焦点眼内レンズEDOF型の構造強度近視や
強度乱視にも
対応できる
AIが設計しており
欠点が少ない
どんな人に
向いているか
最も最新の
レンズを希望する方
なるべく眼鏡なしで
生活したい方
読書が趣味の方強度近視で
他のレンズが
選べない方
最新の欠点の
少ないレンズを
希望する方

インテンシティ

イスラエルのHanita Lenses社によって開発された世界初の5焦点型の眼内レンズです。

遠方、遠中(133㎝)、中間(80㎝)、中近(60㎝)、近方(40㎝)の5つの焦点を持つ設計のためあらゆる距離にピントが合いやすいこと、ハロー・グレア現象が少ないレンズ設計で少なく夜でも安心して過ごせることが最大のメリットです。

最新のレンズを希望される方にはおすすめの眼内レンズです。

インテンシティ

自由診療金額

66万円(税込)〜

デメリット

従来の2焦点眼内レンズ、3焦点眼内レンズのデメリットが軽減されたレンズなので、バランスのよいレンズとなっております。デメリットを強いて挙げるとすれば、レンズの規格範囲の関係で強度近視や強度乱視の方は適応外となる可能性や自由診療のため費用が高額であることです。

メリット

世界初の5焦点眼内レンズであらゆる距離にピントが合いやすいです。

眼鏡なしで日常生活を送れることが期待できます。最新のレンズであるため最先端の多焦点眼内レンズを希望される方におすすめです。

おすすめする人

最新のレンズの多焦点眼内レンズを希望される方

ミニウェル

イタリアのSIFI MedTech社によって開発されたレンズで、レンズの構造が焦点深度拡張型(プロクレッシブ型、EDOF型)であることが最大の特徴です。従来の屈折型、回折型と比べて遠くから近くのものまでスムーズに自然に見ることができるとされています。

ミニウェル自由診療金額

お問い合わせ

エボルブ

イタリアのSoleko社によって開発されたレンズで完全オーダーメイドでレンズの度数設定ができることが特徴です。既存の多焦点眼内レンズの中には強度近視や強度乱視の場合には適応外となるレンズがありますが、このエボルブでは-5.00D~+30.0Dまでと幅広く、乱視度数は1°刻みでオーダーが可能となっています。

エボルブ自由診療金額

お問い合わせ

Galacy(ギャラクシー)

AIが設計した最新の多焦点眼内レンズです。他の多焦点眼内レンズの欠点が抑えられており、近方は40cmから遠方まで連続した見え方ができ、ハロー・グレアも少ない設計になっています。

ギャラクシー自由診療金額

66万円(税込)〜

今回ご紹介したように多焦点眼内レンズの種類は数多く、レンズによってメリット・デメリット、特徴が様々です。実際に多焦点眼内レンズを希望された場合は、より細かく丁寧なカウンセリングをさせて頂いたうえでレンズを選択していきます。ご希望があればカウンセリングの中でお気軽にご相談下さい。

おすすめのレンズについて

当院では以下のような形でレンズをご提案しています。こちらの表はあくまで目安として参考にして頂けたらと思います。

患者さまのおひとりごとに日常生活スタイルや希望は様々ですので、多焦点眼内レンズを検討される場合はカウンセリングの中で医師と相談をしながらレンズを決めていきます。

こんな方におすすめ選定療養自由診療
遠くから近くまで
よく見たい方、
車の運転を行う方
最新のレンズを希望する方
パンオプティクス・
オデッセイ
インテンシティ・
ギャラクシー
夜間の車の
運転もあるが、
近くもそこそこ
見たい方
パンオプティクス
仕事などで毎日の様に
夜間車を運転し、
手元はそこまで
見えなくても良い方
ビビティ・
テクニスピュアシー
ミニウェル
非常に強い強度近視のため
他の多焦点眼内レンズが
選べない方
エボルブ

まとめ

今回は多焦点眼内レンズのメリット・デメリットや種類についてまとめました。白内障手術をされる際のレンズ選択は今後の見え方を左右することにもつながります。

「単焦点眼内レンズ」、「多焦点眼内レンズ」のどちらにするのか。多焦点眼内レンズを選択した場合は、患者さまの生活スタイルや希望に合わせてレンズの種類を決めていくことになります。

それぞれの眼内レンズの特徴やメリット・デメリットを知って頂いたうえで、ご自身の生活スタイル・性格に合わせてレンズ選択をしていくことが最適なレンズ選択へつながっていきます。

今後の見え方にもつながる白内障手術は信頼できると感じたクリニックでカウンセリングを受けて頂くことが大切です。レンズの選択で迷われている方や白内障手術を検討されている方は、ぜひ信頼できる医師のもとでいろいろと相談をされてみて下さい。