レーザー装置を使って、特定の波長のレーザー光で病的な網膜を凝固させることで、疾患の進行を抑えることができます。
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜裂孔などを治療する際に使用します。

後発白内障治療レーザー

後発白内障とは、白内障の手術が終わった後に目の中が混濁して、視力が低下する状態のことです。白内障の手術で目に入れた人工レンズ自体は濁りにくいのですが、レンズを支えている袋は自分の体の組織なので、この袋が濁って視力が低下することがあります。後発白内障治療のレーザーでは、濁った袋の一部を穴を開けて光の通り道を作ります。

袋に痛覚はないため痛みはほぼなく、だいたい3分程度で終わります。白内障の手術を受けた後「なんだか見えにくいな」と感じることがあればご相談ください。

網膜剥離予防レーザー、糖尿病網膜症治療レーザー

レーザーで網膜を固めることで、網膜に開いた穴が広がらないようにして網膜剥離が進行しないようにしたり、糖尿病網膜症が悪化するのを防ぐことができます。

網膜剥離予防のためのレーザーでは、網膜に開いた穴を囲い、穴が広がらないようにすることができます。一方、糖尿病網膜症治療のためのレーザーでは、網膜の広い範囲にレーザーを当てることで、網膜症の進行を止めることができます。

緑内障治療レーザー(SLT)

緑内障は、目の中の水(房水)の流れが悪くなり眼圧が高くなることで、視神経にダメージが蓄積していく病気です。進行を防ぐためには眼圧を下げることが最も大切で、その方法の一つとしてレーザー治療があります。SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術:Selective Laser Trabeculoplasty)は、その代表的な治療法です。

治療の仕組み

SLTでは、房水が排出される「線維柱帯」という部分に弱いレーザーを当てて働きを活性化させ、排水の流れを良くします。例えるなら「台所の流しの目詰まりを掃除して、水の流れをスムーズにする」ようなイメージです。
レーザーで組織を焼き切るわけではなく、組織を刺激して自然な排出機能を取り戻す仕組みなので、ダメージはほとんどありません。

治療の特徴

  • 所要時間は片眼で数分程度、外来で受けられる処置です。
  • 痛みは「チクチクする」程度で、多くの方が強い痛みを感じることなく終えられます。
  • 治療直後から普段どおりの生活が可能で、洗顔や入浴、コンタクトレンズの装用も問題ありません。
  • 効果は一般的に2〜5年ほど持続し、必要に応じて繰り返し行うことができます。

適応となる方

  • 多くの開放隅角緑内障の方(緑内障患者さんの大多数が対象)
  • 目薬だけでは眼圧が十分に下がらない方
  • 毎日の点眼を忘れがちで安定したコントロールが難しい方
  • 白内障手術後で、レーザーを当てやすい状態になっている方

なお、隅角が狭い「閉塞隅角緑内障」の方は、線維柱帯が見えずレーザーを安全に当てられないため、SLTは適応になりません。

メリットと注意点

治療後に一時的に目がゴロゴロする、チクチクするなど軽い炎症症状が出ることがありますが、数日〜1週間ほどで落ち着きます。

合併症がほとんどなく、安全性の高い治療です。

点眼薬の数を減らしたり、場合によっては中止できることもあります。

治療費は片眼で約10万円(3割負担で3万円前後)と安価ではありませんが、効果が2〜5年持続するため、点眼の継続コストや手間を考えると有効な選択肢となり得ます。

更に詳しい解説動画は以下をご覧ください

SLTについて当院理事長上月が解説しています

LI(レーザー虹彩切開術:Laser Iridotomy)

閉塞隅角緑内障や、隅角が狭く将来的に急性発作を起こす危険がある場合には、眼の中の水(房水)の流れを改善して眼圧を下げる必要があります。
レーザー虹彩切開術(LI)では、虹彩(茶目の部分)に小さな穴を開け、房水が前房(角膜と虹彩の間の空間)に流れやすいように新しい通り道を作ります。これにより、急激な眼圧上昇(急性緑内障発作)を予防することができます。

治療の特徴

  • 所要時間は5〜10分程度で、外来で気軽に受けられる処置です。
  • 使用するレーザーは主にアルゴンレーザーとYAGレーザーで、段階的に虹彩に穴を開けます。
  • 痛みはほとんどなく、多くの方が安心して受けられます。

適応となる方

  • 隅角が狭く、将来急性緑内障発作を起こすリスクがある方
  • 白内障手術がまだ早いと考えられる比較的若い方
  • 白内障手術を望まれない方

本来、白内障手術を行うことで隅角は大きく広がり、根本的に発作のリスクを防ぐことができます。ただし白内障がほとんど進んでいない若い方などでは、LIによって「時間を稼ぐ」選択がなされることがあります。

注意点とリスク

基本的に安全性の高い治療ですが、担当医がリスクを考慮しながら適切に判断します。

ごくまれに、角膜内皮細胞にダメージが及ぶことがあります。角膜内皮細胞は再生しないため、術前に細胞数を測定してから適応を判断します。

手術後に一時的な眼圧上昇がみられる場合があるため、処置後はしばらく院内で眼圧を確認してからご帰宅いただきます。

更に詳しい解説動画は以下をご覧ください

LIについて当院理事長上月が解説しています