緑内障とは
緑内障は、眼の奥にある視神経が障害され、視野(見える範囲)が徐々に狭くなっていく病気です。日本における失明原因の第1位であり、非常に重要な疾患です。
緑内障には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 開放隅角緑内障:患者さんの9割以上を占める。進行はゆるやかで、自覚症状がほとんどない。
- 閉塞隅角緑内障:隅角(房水の出口)が狭くなり、急激に眼圧が上昇して発作を起こすことがある。
特に「閉塞隅角緑内障」が引き起こす 急性緑内障発作 は、放置すると数日で失明に至る可能性がある非常に危険な病態です。
急性緑内障発作とは
眼の中には「房水」という透明な液体が循環しています。房水は毛様体でつくられ、虹彩と水晶体の間を通って前房へ流れ、隅角から外へ排出されます。この流れによって眼圧が一定に保たれています。
ところが、隅角が狭い(狭隅角)と房水の出口が塞がれやすくなり、やがて閉塞すると眼圧が急激に上昇します。通常10〜21mmHg程度の眼圧が、発作時には50〜60mmHgに達することもあります。
この急激な上昇が「急性緑内障発作」であり、短期間で視神経を強く傷つけ、失明に直結します。
発作の症状
急性発作は、以下のような症状を伴います。
- 激しい眼の痛み
- 頭痛
- 眼の充血
- 視界がかすむ、ぼやける
- 光の周囲に虹のような輪が見える(虹視)
- 吐き気・嘔吐
これらは脳疾患(脳出血や片頭痛など)と間違えられることもあり、診断が遅れる原因になります。症状が出た場合は救急車を呼んでもよいレベルの緊急事態です。
狭隅角と発症リスク
「狭隅角」とは、角膜と虹彩の間の角度(隅角)が狭い状態を指します。この状態では房水が流れにくく、発作を起こしやすくなります。
リスクが高い方
- 遠視(眼軸が短い=目が小さい)
- 50歳以上の方、とくに女性
- 白内障が進行している方(水晶体が厚くなり隅角を圧迫する)
- 「昔から目が良く、メガネなしで遠くも近くも見えていた」という方
誘因となる要因
- うつ伏せ姿勢
- 散瞳薬の使用(ミドリンPなど)
- 抗ヒスタミン薬、睡眠薬、抗コリン作用薬、麻酔薬の使用
治療方法
急性緑内障発作の治療は、一刻も早い眼圧下降が基本です。
薬物治療
- ピロカルピンで瞳孔を縮め、房水の流れを改善
- 点滴・注射
マンニトールなど高浸透圧薬で眼圧を急速に下げる - 鎮痛薬・制吐薬
頭痛や吐き気の緩和
レーザー治療(LI…レーザー虹彩切開術)
- 虹彩に小さな穴を開け、房水の通り道を作る方法
- 所要時間は5〜10分程度、痛みはほとんどない
- 合併症として「角膜内皮細胞の減少」に注意が必要
- 以前は第一選択だったが、現在は白内障手術が安全・有効になったため出番は減少
- 若年者(40〜50代)や手術に抵抗がある方には有効な選択肢
白内障手術
- 濁った水晶体を取り除き、人工眼内レンズに置き換える手術
- 水晶体は厚く隅角を圧迫するが、人工レンズは薄いため隅角が広がる
- 隅角が広がることで房水の流れが改善し、発作を根本的に予防できる
- 近年は安全性が飛躍的に向上し、当院でも多数の症例に対応
- 50代以降では白内障手術を選択する方が多い
- 若年者では老眼が進むリスクがあるため、状況に応じてLIを併用
予防と日常生活の注意
- 40歳を過ぎたら一度は眼科で隅角の状態を確認しましょう
- 狭隅角と診断された場合は、使用薬剤に注意(風邪薬・睡眠薬など)
- 定期的な検査で「眼圧」「隅角の状態」「角膜内皮細胞数」をチェック
- 強い頭痛・吐き気を伴う眼の痛みが出たらただちに眼科へ
まとめ
急性緑内障発作は、数日で失明につながる可能性がある非常に危険な病気です。
「狭隅角」の方は自覚症状がなく、“目に爆弾を抱えている”ような状態で、発作を起こして初めて気づくケースが多くあります。
治療と予防には レーザー治療(LI) と 白内障手術 があり、特に白内障手術は根本的に隅角を広げ、発作を防ぐ確実な方法です。
当院では、狭隅角や急性緑内障発作のリスクを持つ方に対して、レーザー治療・白内障手術のいずれにも対応しており、安全で確実な治療を多数行っています。
視力を守るためには早期発見と早期治療が何よりも大切です。気になる症状や不安があれば、ぜひお早めにご相談ください。