白内障手術で後悔する人

白内障手術は、日本で年間100万件以上行われる安全性の高い手術です。

現代の医療技術では、手術そのものが「失敗」することはほとんどありません。

ところが実際には、「思っていた見え方と違う」「若い頃と全く同じ見え方になると思っていたのに」と感じて、「わたしの白内障手術は失敗だった…」と思ってしまう方が中にはいらっしゃいます。

その多くは医療技術の問題ではなく、「術後の見え方に関する誤解」や「期待と現実のギャップ」によるものです。

本記事では、白内障手術後に後悔しやすい7つの原因と、それを防ぐためのポイントを専門医の解説をもとに詳しくご紹介します。

当院理事長の上月が動画で詳しく解説しています。

白内障手術とは?

白内障イラスト

白内障手術は、濁った水晶体(カメラでいうレンズ部分)を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える手術です。

  • 手術時間:約10〜20分
  • 多くの場合は日帰り手術
  • 麻酔は点眼や局所麻酔で、痛みはほとんどない

非常に一般的で安全性の高い手術ですが、術後の見え方は患者さんの生活スタイルやレンズの選び方によって異なります。そのため、事前の理解が不足していると「後悔」につながることがあるのです。

白内障手術で後悔する6つの原因

考える女性
  • 想像していた「見え方」と違った
  • 他の目の病気が原因で視力が回復しない
  • 飛蚊症(ひぶんしょう)が目立つようになる
  • 光のまぶしさやにじみ(ハロー・グレア)
  • 年齢による視力回復の限界
  • 白内障の進行が軽い段階での手術
  • 後発白内障による誤解と不安

それぞれ説明していきます。

1. 想像していた「見え方」と違った

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白内障手術後の見え方は、選ぶ眼内レンズの種類や焦点の設定によって変わります。

  • 単焦点レンズ(遠方に焦点) → 遠くはよく見えるが、近くは老眼鏡が必要になる。
  • 単焦点レンズ(近方に焦点) → 手元は見やすいが、遠くはぼやける。
  • 多焦点レンズ → 遠くも近くも見えるが、夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)が気になる場合がある。

特に後悔が多いのは「もともと裸眼で遠くがよく見えていた人」が、近方に焦点を合わせてしまうケースです。

例えば、学生時代から視力が良く、眼鏡を使ったことがなかった方が「読書を楽しみたいから近くに焦点を合わせてほしい」と希望される場合があります。

ところが、手術後に遠くが見えにくくなると、「今まで当たり前に見えていた遠くがぼやけてしまった」と強い不満につながってしまいます。

多くの患者さんは「近くも遠くも両方見える」と思い込んでしまいがちですが、単焦点レンズは焦点を合わせた距離しかクリアに見えません。

そのため、術前に十分な理解がなければ「こんなのは失敗だ」と感じてしまうのです。

一方で、もともと手元を見るときに老眼鏡を使っていた方が遠方に焦点を合わせる場合は、「以前と同じように遠くが見える」と納得されやすく、不満は少ない傾向にあります。

つまり、術前の視力や生活習慣と術後の焦点の選び方が一致しているかどうかが、後悔を防ぐ鍵になります。

2. 他の目の病気が原因で視力が回復しない

白内障以外の病気を併発している場合、手術をしても視力が十分に出ないことがあります。代表的なものは次の通りです。

「白内障さえ治せば、視力が元通りになる」と考えて手術を受けても、これらの病気が影響して思ったほど見え方が改善しないことがあります。

このため「白内障手術が失敗だったのでは?」と考えてしまうことがあります。

当院では、このような後悔を防ぐために、術前に詳細な検査を行い、現在の目の状態をしっかり把握します。視力が出にくい原因が他に隠れていないかを調べたうえで、患者様に「どこまで改善できるか」「手術後にどのような見え方になる可能性があるか」を丁寧に説明しています。

このように、患者様に現在の眼の状態を理解していただくことで、手術後の「こんなはずじゃなかった」という後悔を減らすことが可能になります。

3. 飛蚊症(ひぶんしょう)が目立つようになる

飛蚊症のイメージ

白内障手術後、「よく見えるようになることで」逆にそれまで気づかなかった飛蚊症がはっきり見えるようになることがあります。

  • 黒い点や虫のような影が動いて見える
  • 手術で消えるわけではない

「手術で全部治る」と思い込んでいると、術後に不満を感じる原因となります。

4. 光のまぶしさやにじみ(ハロー・グレア)

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ハロー・グレアとは/白内障ポータルサイトより引用

特に多焦点レンズを選んだ場合、夜間のライトがにじんで見える「ハロー・グレア」が生じることがあります。

  • 車のライトがまぶしい
  • 夜の運転がしづらい

白内障手術の際に選ぶ眼内レンズによって見え方は変わってくるので、生活スタイルに合った眼内レンズを選択することが重要です。

5. 年齢による視力回復の限界

昔を懐かしむ写真

80歳以上の高齢者では、網膜や視神経の働きが低下しているため、手術をしても1.0以上の視力が出ないことがあります。

「若い頃のようにくっきり見える」と期待すると、現実とのギャップで「思ったより見えなかった」と感じることがあります。

6. 白内障の進行が軽い段階での手術

困っている男女

白内障が軽度の段階で「友人が手術して世界が変わったと聞いた!」と希望される方がいます。しかし、水晶体がまだそれほど濁っていない場合、劇的な変化は感じにくいものです。

期待が大きすぎると「友達はとてもよく見えるようになったというのに、自分はそこまで変わらない。もしかして失敗だったのでは?」という考えになる可能性があります。

7.後発白内障による誤解と不安

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後発白内障について/日本白内障学会より引用

白内障手術を受けた後に、ご友人などから「また視界がかすんできた」「二回目の手術が必要と言われてやった」という話を耳にして不安に感じる方がいらっしゃいます。中には「手術が失敗したからでは?」と心配される方もいます。

これはほとんどが「後発白内障(こうはつはくないしょう)」と呼ばれるもので、決して手術の失敗ではありません。

白内障手術では、濁った水晶体を取り除いた後に眼内レンズを残した袋(水晶体嚢)に固定します。この袋が時間の経過とともに濁ってくることがあり、それが「後発白内障」です。

  • 発症率は数年以内に約20〜30%程度と比較的よく見られる
  • 病気ではなく、手術の経過で自然に起こり得るもの
  • 友人や知人が「二回白内障手術を受けた」と言っていた場合、実際にはこの後発白内障の治療であることが多い

治療について詳しく説明していきます。

後発白内障の治療

YAGレーザー

治療は「YAGレーザー」という特殊なレーザーを用いて濁りを飛ばすものです。

  • 治療時間は数分程度
  • 痛みはほとんどない
  • 日帰りで終了
  • 再び視界がクリアになる

当院でも行っている一般的な処置であり、改めて「メスを入れて、白内障手術をやり直す」ということではありません。

白内障手術で後悔しないためのポイント

医師から十分な説明を受ける

診療する上月院長

焦点の設定やレンズの特徴について、医師から丁寧な説明を受けましょう。不明な点は必ず質問し、理解した上で選択することが大切です。

自分の生活スタイルに合ったレンズを選ぶ

  • 車の運転が多い方 → 遠方に焦点を合わせる
  • 読書や裁縫など手元作業が多い方 → 近方に焦点
  • メガネをなるべく使いたくない方 → 多焦点レンズ

生活習慣を考慮して選択することで、後悔を防ぎやすくなります。

多焦点眼内レンズについては以下を詳しくご覧ください。

他の病気があるか確認する

白内障以外の眼の病気がある場合、手術をしても十分な視力回復が得られないことがあります。例えば、緑内障や加齢黄斑変性などは視力の改善に限界があります。そのため、術前にしっかり検査を行い、現在の目の状態を正確に把握することがとても重要です。

当院では、手術前に網膜や視神経の精密検査を行い、「どの程度まで見えるようになる可能性があるのか」「他の治療が必要か」を丁寧に説明しています。こうしたプロセスを踏むことで、手術後の「こんなはずじゃなかった」という後悔を未然に防ぐことができます。

情報収集をして正しい知識を得る

手術に関して正しい知識を持つことは、安心して手術に臨むために欠かせません。友人や知人から体験談を聞くのも参考になりますが、それだけに頼ると誤解を生むことがあります。

信頼できる医師が発信している情報を、インターネットや動画などでご覧になることをおすすめします。(実際にこのページをご覧になっている方は、すでに積極的に情報収集をされていると思います。)

当院では、白内障手術に関して理事長の上月がYouTubeで詳しく解説しています。手術前にぜひご覧いただき、より深く理解を深めていただければと思います。

当院では、手術前に上記の動画をご覧いただくことを推奨しています。白内障手術に不安を抱えている方はぜひご覧ください。

当院でできること

当院では、白内障手術を検討されている患者様に対し、以下の取り組みを行っています。

  • 丁寧なカウンセリングで生活スタイルに合ったレンズを提案
  • メリット・デメリットを分かりやすくご説明
  • 術後の見え方についてシミュレーションを実施
  • 他の眼疾患の有無をしっかり検査

安心して手術に臨んでいただけるよう、患者様一人ひとりに合わせたサポートを行っています。

まとめ

白内障手術は安全で有効な治療ですが、「期待と現実のギャップ」から後悔してしまうことがあります。

  • 想像と違う見え方
  • 他の病気の影響
  • 年齢による限界

といった要因を正しく理解していれば、後悔は大きく減らせます。

大切なのは、手術前にしっかり説明を受け、納得して選択することです。当院では患者様の生活に寄り添った治療を心がけております。安心してご相談ください。

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この記事の監修

上月院長


上月 直之
こうづき なおゆき
医療法人社団慶月会理事長
日本眼科学会認定眼科専門医

所属学会
日本眼科学会
日本眼科医会
東京都眼科医会
日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)
ICL研究会
日本緑内障学会
日本小児眼科学会・日本眼科アレルギー学会
日本角膜学会・ドライアイ研究会
オルソケラトロジー講習会修了

経歴

神戸大学工学部情報知能工学科 卒業
岡山大学医学部医学科 卒業
横浜市立市民病院 初期研修
慶應大学病院 眼科学教室
済生会中央病院 眼科
鶴見大学歯学部附属病院 眼科学教室

医療法人社団慶月会 理事長
日本眼科学会認定 眼科専門医
2018年 経堂こうづき眼科 開院
2021年 王子さくら眼科 開院
2022年 経堂白内障手術クリニック 開院

神戸大学と岡山大学で学び、慶應大学病院眼科学教室を経て、2018年に経堂こうづき眼科開院。日本眼科学会認定の眼科専門医であり、地域医療に貢献するとともに、最先端の医療提供に努める。最新の白内障手術を必要とされる方に受けてもらうため2022年経堂白内障手術クリニックを開院。