iStent(アイステント)を用いた白内障手術と同時にできる緑内障手術について
〜緑内障の進行抑制を目指す、新しい低侵襲手術〜
iStent(アイステント)とは?

iStent(アイステント)は、緑内障の進行を抑えるために眼内へ挿入する非常に小さな医療機器(チタン製のステント)です。長さは約1mm、指先に乗るほど小さなチューブ状の構造で、目の中を流れる房水(ぼうすい)の排出を改善し、眼圧を安定させることを目的としています。
日本では2017年に医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって承認され、緑内障手術の中でも身体への負担が少ない「低侵襲緑内障手術(MIGS)」の代表的な治療法として注目されています。
白内障手術との同時施行

当院では、白内障手術と同時にiStentを挿入する「白内障併用iStent手術」を行っております。これは、白内障手術時に作成する小さな切開創からiStentを挿入し、房水の出口である「線維柱帯」という部位にステントを留置することで眼圧を下げるものです。
手術の特徴
- 手術時間は白内障手術に続けて約5分程度
- 追加の切開は不要で術後の回復も早い
- 通常、麻酔下で痛みはほとんどありません
- 白内障治療と緑内障治療を同時に行うことができる
iStentのメリット
- 眼圧を安定させる効果
- 点眼薬1種類分(約3〜8mmHg)の眼圧下降が期待できます(個人差あり)。
- 点眼薬の本数を減らせる可能性
- 長期的には点眼治療の手間やコストを軽減できる場合も。
- 術後の視力回復が早い
- 従来の緑内障手術よりも術後合併症のリスクが少ないため、比較的早期から視力の改善が期待できます。
- 身体への負担が少ない
- 高齢の方でも比較的安全に施行可能です。
対象となる患者さん
- 開放隅角緑内障(閉塞隅角緑内障の方は適応外)
- 軽度〜中等度の緑内障で点眼加療中
- 白内障手術の適応がある方
- 点眼だけでの眼圧コントロールが難しくなってきた方
手術の安全性とリスク
iStentは承認された安全な手術ですが、以下のような合併症が報告されています。
- 一時的な眼圧上昇または低下
- ステントの閉塞(血液やフィブリンの詰まり)
- 術後の炎症、目の違和感
- 角膜浮腫
これらは稀なケースであり、手術前には医師が適応とリスクを丁寧にご説明いたします。
手術費用と医療費助成
iStent手術は保険適用(高額療養費制度の対象)となっており、白内障手術と併せても実際の自己負担額は大きく変わらないケースがほとんどです。
高額療養費制度 年齢・保険割合別の目安
年齢区分 | 所得・保険割合 | 月の上限額(目安) |
---|---|---|
70歳以上 | 1割負担 | 約8,000円 |
2割負担 | 約18,000円 | |
3割負担(現役並) | 約80,100円+α | |
70歳未満 | 3割負担(一般) | 約90,000円 |
※正確な金額は、住民票のある自治体の窓口でご確認いただくか、「限度額適用認定証」の取得をご検討ください。
ご希望の方は医師にご相談ください
iStent手術は、日本眼科学会指定の講習を修了した眼科専門医のみが行える手術です。当院でも、十分な経験と技術をもつ医師が担当いたします。
「点眼が多くて大変」
「これ以上視野が悪くなるのが不安」
そんなお悩みをお持ちの方は、診察時にお気軽にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 手術中は痛みがありますか?
A. 点眼麻酔で行うため、痛みを感じることはほとんどありません。
Q. どれくらい眼圧が下がりますか?
A. 個人差はありますが、1種類の点眼薬を減らせる程度の効果が期待されます。
Q. 費用は高いですか?
A. 保険適用であり、ほとんどの方が高額療養費制度の上限内で収まります。
まとめ
iStentを用いた白内障同時手術は、緑内障の進行抑制と白内障の改善を同時に実現できる、画期的な低侵襲手術です。
「目薬を減らしたい」「進行が心配」「手術は不安」など、ご不安なことも含めて、まずはお気軽にご相談ください。
患者様一人ひとりに合った最適な治療をご提案いたします。