「急に視界に輪っかのような影が見える」「黒い糸くずのようなものが飛んで見える」
こうした症状は、後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)が原因のことがあります。
多くの場合は加齢による自然な変化ですが、まれに網膜裂孔(もうまくれっこう)や網膜剥離(もうまくはくり)といった重い病気のきっかけになることもあります。
この記事では、後部硝子体剥離輪について、原因や治療の必要性、受診の目安を詳しく解説します。
当院理事長上月が動画でも詳しく解説しています。
後部硝子体剥離とは?
硝子体と加齢変化
硝子体(しょうしたい)は、眼球の大部分を占める透明なゼリー状の組織です。若い頃はゼリーのように弾力がありますが、加齢とともにサラサラの液状に変化していきます。その過程で硝子体が網膜(眼球の内側を覆う膜)から少しずつ離れていく現象が後部硝子体剥離です。
輪っかが見えるのはなぜ?ワイスリングとは?
硝子体が視神経の付け根から外れるとき、眼底写真を撮影すると輪っか状の影(ワイスリング)が見えることがあります。これが「輪っかが飛んで見える」という症状の正体です。
ワイズリングの特徴

- 50〜60代で多い(早い人は40代でも起きる)
- 視界に小さな丸や輪が浮いて見える
- 多くは自然現象で大きな問題にはならない
飛蚊症(ひぶんしょう)との関係
飛蚊症とは、視界に虫や糸くず、黒い点や影が浮いて見える症状のことです。
後部硝子体剥離は、飛蚊症の原因の一つです。
- 後部硝子体剥離が原因の飛蚊症
→ 輪っかや黒い影が1つはっきり見える - 硝子体混濁が原因の飛蚊症
→ 黒い点や糸くずのような影が複数見える
飛蚊症が急激に悪化したと感じたら、なるべく早く眼科を受診してください。
後部硝子体剥離が危険な状態について-網膜裂孔・網膜剥離のリスク
後部硝子体剥離自体は自然な変化ですが、まれに硝子体が網膜を引っ張って破れを作る(網膜裂孔)ことがあります。
さらに進行すると、網膜剥離(失明につながる病気)に至る可能性もあります。
注意すべきサイン
- 光がピカッと走るように見える(光視症)
- 視野の一部が黒く欠ける
- 飛蚊症が急に悪化した
これらがある場合は、すぐに眼科を受診する必要があります。
「輪っかが見える」「飛蚊症がある」場合の眼科受診の目安
「輪っかが見える=必ず危険」ではありませんが、一度は必ず眼科で網膜の状態をチェックしてもらうことが大切です。
眼科受診の目安
- 輪っかが1つだけで他に異常がない場合 → 緊急性は低いが、早めの受診を推奨
- 飛蚊症が急に増えた/光が見える → 至急受診
- 視野の欠けやカーテンのような影がある → 網膜剥離の可能性あり、救急対応が必要
診察では、散瞳検査(瞳を広げて網膜を詳しく観察)を行い、裂孔の有無をチェックします。
治療について
後部硝子体剥離のみの場合
- 基本的に治療は不要
- ワイスリングや飛蚊症は自然に慣れていくことが多い
網膜裂孔が見つかった場合
- レーザー治療で裂孔の周囲を固め、網膜剥離への進行を防ぎます。
- 治療は外来で行われ、痛みも少なく、短時間で終了します。
関連リンク:レーザー治療について
網膜剥離に進行した場合
- 硝子体手術やガスを入れる手術が必要になることがあります。
- 入院やうつ伏せでの安静が必要になるケースもあります。
予防はできる?
後部硝子体剥離は加齢による自然な変化であり、残念ながら予防はできません。
白髪や老眼と同じように「年齢による現象」と考えられています。
ただし、以下の方は早めに発症する傾向があります。
- 強度近視の方(眼球が長く硝子体が不安定)
- 片目に後部硝子体剥離が起きた方(もう片方の目も時間差で起きることが多い)
当院でできること
当院では、後部硝子体剥離や飛蚊症の患者さんに対して、
- 網膜裂孔の有無を確認する丁寧な散瞳検査
- 必要に応じたレーザー治療(レーザー治療について)
- 視力低下や視野異常が出た場合の迅速な手術案内
を行っています。
「輪っかが見える」「急に飛蚊症が増えた」と感じたら、どうぞ早めにご相談ください。
参考リンク
まとめ
- 後部硝子体剥離は加齢による自然な現象
- 輪っかが見える症状(ワイスリング)は典型的
- 多くは心配いらないが、網膜裂孔や網膜剥離を合併することもある
- 光が走る、視野が欠ける、飛蚊症が急に増えた場合は至急受診
- 治療は必要に応じてレーザーや手術で行う
当院理事長上月が動画でも詳しく解説しています。
関連リンク
- 網膜剥離・網膜裂孔
- 飛蚊症・光視症
- レーザー治療
- 後部硝子体剥離/日本眼科学会(外部リンクが開きます)
受診・予約案内
当法人は王子さくら眼科と経堂こうづき眼科、2院展開しております。王子さくら眼科は土曜祝日と開院しており、経堂こうづき眼科は土曜日曜祝日ともに行っているため、ご来院しやすい方にお越しください。
王子さくら眼科
〒114-0002
東京都北区王子1丁目10-17 ヒューリック王子ビル 5F
京浜東北線/東京メトロ南北線「王子駅」北口徒歩30秒 みずほ銀行の上
TEL:03-6903-2663
診療時間: 午前9:30〜13:00 午後15:00〜18:30
休診日:日曜日
王子さくら眼科予約について
webでのご予約も承っております。
web予約内での日程が合わない場合、予約なしで直接ご来院ください。
経堂こうづき眼科
〒156-0052 東京都世田谷区経堂2-1-33 経堂コルティ 2F
小田急線経堂駅すぐショッピングモール内
TEL:03-5799-7276
診療受付時間: 午前10:00-13:00 午後15:00-18:30
※木曜日休診、日曜祝日18:00まで
土日祝も診療を行っております。(木曜休診日)
経堂こうづき眼科予約について
一般診療の予約は受け付けておりませんので、直接ご来院くださいませ。
白内障手術の予約相談などを受け付けております。よろしければご家族の方も一緒にご来院ください。 webでの日程が合わない場合、予約なしで直接ご来院ください。
その他、予約できる診療内容については以下のリンクを御覧ください。
この記事の監修

上月 直之
こうづき なおゆき
医療法人社団慶月会理事長
日本眼科学会認定眼科専門医
所属学会
日本眼科学会
日本眼科医会
東京都眼科医会
日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)
ICL研究会
日本緑内障学会
日本小児眼科学会・日本眼科アレルギー学会
日本角膜学会・ドライアイ研究会
オルソケラトロジー講習会修了
経歴
神戸大学工学部情報知能工学科 卒業
岡山大学医学部医学科 卒業
横浜市立市民病院 初期研修
慶應大学病院 眼科学教室
済生会中央病院 眼科
鶴見大学歯学部附属病院 眼科学教室
医療法人社団慶月会 理事長
日本眼科学会認定 眼科専門医
2018年 経堂こうづき眼科 開院
2021年 王子さくら眼科 開院
2022年 経堂白内障手術クリニック 開院
神戸大学と岡山大学で学び、慶應大学病院眼科学教室を経て、2018年に経堂こうづき眼科開院。日本眼科学会認定の眼科専門医であり、地域医療に貢献するとともに、最先端の医療提供に努める。最新の白内障手術を必要とされる方に受けてもらうため2022年経堂白内障手術クリニックを開院。